東京、銀座にある歌舞伎座。毎月様々な歌舞伎演目が上演されますが、劇場で楽しめるのは観劇だけではありません。劇場内には何点かの日本画が飾られており、アートギャラリーとしての一面も持っています。
展示作品の一部をご紹介します。
歌舞伎座とは
歌舞伎座とは、東京都中央区銀座にある歌舞伎専用の劇場です。1889年(明治22年)に開場し、震災や空襲などの困難を経て4度の建て替えを経験しました。
現在の歌舞伎座は2013年2月に竣工された第五期です。地上4階建て、全1,964席を有する他、お食事処や売店も充実しています。
そして、各階の廊下や踊り場には日本画を展示。幕間中にアート鑑賞を楽しむことができます。
展示作品 鏑木清方 さじき
まずご紹介するのは、2階席の外廊下に飾られている、鏑木清方の《さじき》です。
「さじき」とは、桟敷席のこと。劇場などに設けられる座席の一種で、ほかの座席よりも一段高く構え、机を備えた特別席です。現代の歌舞伎座でも劇場の両端に一列20席ずつ用意されています。
本作は桟敷席で芝居を観る親子の様子を描いています。机に置いたオペラグラスも、手に持った扇子のことも忘れて芝居に見入る姿は、時代を超えた現代の歌舞伎座でも度々目にする光景。歌舞伎座ならではの華やかな一枚です。
展示作品 川端龍子《青獅子》
二階へとつながる階段の踊り場に大きく飾られた一枚。近代日本画の巨匠、川端龍子の《青獅子》をご紹介します。
1950年、歌舞伎座の再建を祝して制作されました。白い牡丹を加える青い獅子を画題としています。あちらを睨む鋭い視線は、まるで歌舞伎役者の見得のよう。歌舞伎役者の十代目 松本幸四郎さんは、歌舞伎座内で最も印象深い絵として本作を挙げています。1
歌舞伎座ファンから永く愛されてきた作品です。
展示作品 亀井至一《山茶花の局(美人弾琴図)》
亀井至一《山茶花の局(美人弾琴図)》も、2階の外廊下に飾られている作品の一つ。油絵ですが、構図や色遣いはまるで日本画のようです。
琴を前に物思いに耽る女性は、「宮廷の花」と謳われた山茶花の局という女性をモデルにしています。山茶花の局は本名を日野西薫子といい、煙草王と称された実業家、村井吉兵衛の妻でした。
座席でもアート鑑賞? 緞帳の美
アートを楽しめるのは外廊下だけではありません。歌舞伎座の緞帳は全4種類。それぞれ日本画をモチーフに制作されています。歌舞伎座の新開場十周年を記念し2023年3月から公開されているのが、《霊峰飛鶴(れいほうひかく)》です。
この新緞帳「霊峰飛鶴」は、明治、大正、昭和を通じて活躍した日本画の巨匠、横山大観の《霊峰飛鶴》をもとに、株式会社川島織物セルコンが製織したものです。雄大な富士山から群れをなす鶴まで、精巧に織られています。
観劇のお供に、劇場内の歌舞伎鑑賞を
歌舞伎公演には30分前後の幕間が設けられることが多く、食事やお買い物など、思い思いの時間を過ごすことができます。幕間で劇場内をめぐり、ゆっくりアート鑑賞をされてみてはいかがでしょうか。
施設情報
- 山種美術館「歌舞伎座建替記念特別展 知られざる歌舞伎座の名画」の特別記念講演「聖地であり、戦場である歌舞伎座」より ↩︎